採血検査

ずっと、目の前の15番の部屋から先生に呼ばれるとばかり思っていた。しかし、15番と14番?、15番の隣の部屋の間には、細い廊下があった。その廊下の奥から赤いファイルを持った青い服を着た看護師が、こちらにやって来た。

「診察の前に、はじめに採血検査を受けてきてください」

その看護師は、ベンチに腰かけている私の前までやって来ると、話しかけてきた。採血検査と聞いて、私の頭には、真っ先に注射が浮かびあがった。注射をしなければならないのか、小さい頃から注射が苦手な私は、少し身構えてしまっていた。

「このファイルを持って、採血に行ってきてください」

看護師は、手に持ってきた赤いファイルを、私に手渡した。

「はい、採血ってどこに行けばいいですか?」

私は、赤いファイルを看護師から受け取りながら、質問した。

「ここの廊下をまっすぐ、さっき受付をしたところまで戻ってください。そこの受付のところを左に曲がって、ここのちょうど反対側なんですけど、左を曲がって突き当たったら、そこをさらに左に曲がってください。左に曲がると、トイレがあります。そのトイレの先が採血の場所です。そこで、このファイルを渡してもらえれば、採血してもらえます」

私は、看護師からもらった赤いファイルを持って、廊下を先ほどの受付まで戻り、そこを左折、突き当たりの壁一面が大きなガラス張りの窓になったところまで突き進んだ。ガラス張りの窓からは、病院の前の大通りがよく見えていた。そこを、さらに左に曲がると、確かに男女別のトイレがあった。そのトイレの前を通り過ぎていくと、窓口があった。

窓口の人に、ここが採血のところかどうか敢えて聞く必要はなかった。窓口の人の背後には、私の苦手な注射するときのセットが置かれているのが見えていたのだった。

「お願いします」

私は、看護師からもらった赤いファイルを差し出すと、代わりに番号札を渡されて、その番号を呼ばれたら、中に入るように指示された。私が、受付の前に置かれている椅子に腰かけようかどうしようかしているうちに、すぐに私の番号が呼ばれた。

「はーい!」

私は、採血室の中に入った。

「腕をめくってから座ってください。何かアレルギーとかはありますか?アルコールは大丈夫ですか?」

私は、服の袖をめくってから、腕をカウンターテーブルの上に置かれたクッションの上に置いてから、カウンターの前の椅子に座って、首を大きく横に振った。

「それでは、ちょっとチクッとしますね」

看護師は、私の腕をアルコールの付いたガーゼで拭いた後、止血止めのバンドを上腕部に巻いた。次に来るのは、注射器だ。そう感じた私は、注射のほうを見ないように、顔を反対側に向けて、目をつぶった。

看護師は、私が顔を背けたのを確認して、

「あっ、注射がこわいのですね」

と、私の気持ちをすぐに理解してくれた。

「少しチクッとしますよ・・」

看護師から、その言葉を聞いただけで、なんとなく注射の針が刺さって痛いような感じがしてしまった私は、

「痛っ」

と小さくつぶやいてしまっていた。

「あ、まだ刺してませんよ・・」

看護師が笑いながらつぶやいた後で、真顔ですぐですから少し我慢してくださいと言ったその後にすぐ、チクッときた。私が、目をつぶったまま必死で我慢していると、

「はい、終わり。15分ぐらい押さえたら、もうこれは外してしまっても大丈夫ですからね」

看護師は、私の腕、ちょうど注射の針を刺したところにガーゼをテープで止めると、採血は終わりになった。

「もう戻って良いのですか?」

看護師が頷いて、私は、自分の腕のガーゼが外れないように手で押さえながら採血室を後にした。採血室を出ると、ここに来たときの道の、右には曲がらずに、左方向へ向かっていた。

来たときと同じルートを通らなくても、左方向に突き当たったところを、さらに左へ曲がれば、また15番の部屋の前に出れるのではないかと考えていたのだ。そして、その考え通りに突き当たったところを左折して、生理検査室の前を通り越して直進していくと、想定通りに15番の部屋に戻ることが出来た。

「今日は、生理検査室が開いていてよかった」

左折したところの生理検査室前の入り口と出口には、扉が付いていて、もし生理検査室が閉まっていたら、通り抜けが出来ないところだった。

PSAの値につづく


採血検査
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