あとがき

「おしっこもれもれ大作戦」を書き終えて

9月に発症した前立腺肥大症の病気だったが、紆余屈折があって、おかげさまで今は順調に回復、普通に生活ができている。

「本日は、病院の診察の日です」

1月10日午後、会社はお休みを取って、前立腺の手術を受けた鶴見の病院に来ていた。先生の診察は、午後3時半からの予約だったが、採血の検査があるため、予約時間よりも1時間早く、2時半には来るようにと、退院の日の朝、看護師に言われていたのだった。

病院の1階エントランスにある再来の機械に、診察券を通してから、機械のすぐ横のエスカレーターで2階の泌尿器科の受付に行き、診察券と再来機が吐き出した紙を提出する。

「まだ採血してきていませんよね。先に採血してから戻ってきてください」

受付の看護師に言われて、21番の採血ルームに向かう。

泌尿器科の受付でもらった青い色のクリアファイルを提出すると、代わりに77番と書かれたレシート用紙を渡され、部屋の表にある電光掲示板で「77番」が呼ばれるのを待つ。

「奥の部屋で、お腹に冷たいの付ける検査はやらなくていいのですか?採血の順番を待っている間に、先にやってきましょうか?」

「心電図の検査は今日はありません」

前回、PSAの検査をしに来たときは、奥の部屋で心電図の検査もあったのだ。あのときは、採血が並んでいて、順番を待っている間に、先に心電図の検査を受けてきたのだった。今回は、心電図の検査は無いらしい。採血の検査だけのようだ。

「77番」

あのときは、採血検査の部屋の前に、大勢の人が群がっていて、自分の番号が呼ばれるをまでに、かなりの時間が掛かったのであった。今回は、待つまでもなかった。すぐに呼ばれて、腕をまくって差し出して、採血された。いつものように、採血の時は、注射の針が自分の体に刺さるのを見たくないので、腕だけ出して、目をつむり、そっぽを向いての採血だ。

「終わりました」

採血が終わって、再び泌尿器科の受付に戻って、採血の終わった紙を提出する。

「それでは、9番の前の椅子でお待ちください」

泌尿器科の診察室のある、ドアに大きく9と数字の入った部屋の前で腰かけて、自分の診察の順番を待っていた。

「○○番さん」

奥の部屋の前から看護師が呼んでいた。採血の検査も終わり、あとは診察室で先生の診察を受けるだけだと思っていたので。まさか奥の部屋から呼ばれるなどと思ってもいなかった。○○番が自分の番号だとも気づかなかった。

「あ、はい」

ようやく私は、○○番が自分の番号だったことに気づいて、呼ばれた看護師のほうを見た。こちらで検査をしますので、先にこちらの部屋へお出でください。9番の診察室から3、4部屋隣りの部屋に呼ばれた。さらにその2つ先の部屋は、例の椅子の上に腰かけて、足を開いて、痛い、こわいPSA検査を受けた部屋だった。

「今からおしっこをしてもらって、その後に、膀胱の中に、おしっこが残っていないかどうかの検査をします」

そして、私は一つ手前の部屋の中にあるトイレでおしっこをさせられた。おしっこが終わったら、また隣の部屋に戻ってきてくださいと言われていた。

「あまり、おしっこ貯まっていないのだけど・・」

それでも、出せるだけのおしっこを出してから、隣の部屋に戻ってきた。そこの診察ベッドに横になって、お腹の下半身に冷たいものを当てられて、膀胱の中を検査された。

「おしっこは、ちゃんと全部外に出ていて、膀胱の中には、おしっこは一つも残っていません」

検査の結果を、看護師に伝えられた。前立腺の手術はうまくいっているようだった。

「それでは、先生に呼ばれるまで、診察室の前の椅子で、もうしばらくお待ちくださいね」

看護師に、そう言われて、私は診察室の前の椅子に戻った。

「おしっこの検査をしますから、おしっこを取ってください」

今度は、さっきの看護師とは別の看護師に呼ばれた。

まさかの今さっき、おしっこした後に、膀胱におしっこが残っていないかどうかのチェックで、それほど、おしっこをしたかったわけでもないのに、無理やりおしっこをしてきたというのに。今度は、おしっこ自身の検査とかで、コップにおしっこを出してくれというのだ。

「すぐには出ないですよね」

さっき、膀胱の残尿検査で、おしっこをしたばかりだということは、その看護師もわかってくれているみたいで、おしっこ用のカップを、私に手渡しながらも、申し訳なさそうだった。

本当に、おしっこなんて出そうもなかったのだが、それでも、自分のおしっこを採取しないと検査してもらえないと思ったので、カップを持って、トイレに行って、必死でおしっこを絞り出した。絞り出すまでに時間は掛ったが、やっと20ccぐらいはコップに出た。

「このぐらいでも大丈夫でしょうか」

私は、看護師に採取したおしっこの入ったコップを手渡しながら。聞いた。

「なんとか、これで検査してもらいますね」

看護師は、私のおしっこが、ほんの少ししか入っていないコップを持って、検査員に渡しに行ってくれた。検査員のところから戻ってくると、なんとか、その量で検査してもらえるとのことだった。そして、検査が終わるのと、自分の番の診察が来るのを、9番のドアの前で待っていた。

「なんか時間かかってるなぁ」

結局、呼ばれるのは待っている人の中で一番最後になってしまった。きっと、あれぽっちしか、おしっこを採取できなかったものな、きっと、もっといっぱいおしっこを採取できていれば、検査もスムーズに早く出来たのであろう。

「今なら、もう少しおしっこ出せるかも・・」

診察室の前で待っている間、検査の人が検査しやすいように、トイレへ行って、もう少しおしっこを採取してこようか。でも、おしっこを入れるコップが無いな、そういえば、1階の水飲み場に紙コップが置いてあったな。あの紙コップをもらってきて、あそこにおしっこを入れるか、でも、今さら、おしっこを提出しても仕方ないか、そんなことを考えているうちに、診察室から呼ばれた。

「こんにちは」

9番のドアを開けて、診察室の中に入った。

「具合はどうですか?」

先生に聞かれ、退院した後は、おしっこがもれもれで、オムツをしないと大変だったけど、尿取りパッドでも大丈夫になって、やがてもれもれも無くなり、順調ですと答えた。

「そうですね。PSAの値なんですけど、通常は4以下なのですが、手術前は18あったのが、現在は1.4になってます」

さっき採血した検査の結果を見せてくれながら応えた。

先生は、前立腺肥大症が発症してから、ずっと私のPSAの値が高かったことを気にしてくれていて、それが手術の後、正常値以下まで下がったことで、もう全く問題ないと病気が完全に完治したことに太鼓判を押してくれた。

「病院なんて、あんまり来ないほうが良いです」

先生は、私に言ってくれた。どの数値をみても全く問題ありません。完治です。食べるものも、重たいものも、車の運転だって、もはや何の制限も必要ありません、完治ですと言ってくれた。

「ところで、君は、仕事は何をしているの?」

「WEBを作ったりしています」

私は、先生に聞かれて答えた。

「それで、今回の前立腺の病気を、闘病記に仕上げたんですよ」

「ほお、それはおもしろい」

先生は笑顔で答えてくれた。その後、泌尿器科の受付の前で、会計処理が終わるのを待っていると、看護師が来てくれて、さっきの闘病記って、先生でも、看護師でも、誰でも読むことが出来るんですか?と質問された。

「出来ます。月刊ヘルシーで検索すれば、出てきますから」

私は、そう看護師に答えたので、もしかしたら、いま書いているこの文章も、病院でお世話になった医師や看護師の皆さんにも読んでもらえているのかもしれない。

月刊ヘルシー編集部 スタッフ


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