おしっこは出るようになっているはず

次の日の朝、目が覚めた。

「ごはんです」

朝ごはんを食べ終わって、朝のユリーフのお薬を1錠飲んだ。そして、また意味のないことは、わかっているのだが、おしっこがしたくなり、トイレに向かった。

「そろそろ、おしっこには自分の力で出れるようになってもらわなきゃ」

もう次の診察日まであと1週間を切っているのだ。そろそろ少しずつでも良いから、クダを外しても、普通におしっこがトイレで出来るようになってもらわなくては。いや、自力でおしっこが出てくれるような兆候だけでも現れてもらわなくては困る。私は、そう思っていた。

きょうは週末、土曜日だ。

会社もないし、おしっこが出れるようになるための訓練に、とことん付き合ってあげられる時間はいっぱいあるのだ。そう思って、朝からトイレに駆け込み、座っていたのだった。

しかし、相変わらず、おしっこは、身体の中を通っているクダを通じて、勝手に、おしっこ袋のなかにへと流れていっている。いったい、どのようになると、おしっこが自力でも出れるようになる兆候なのかも、自分ではさっぱりよくわからなかった。

「あれ、なんだかクダが外れそうな動きをしていないか」

私は、ずっとトイレの便器に腰かけていると、身体の中から飛び出しているクダが、尿道のところからビクンビクンと外れそうな動きをしているような気がしてきていた。もしかして、自分の身体が、尿道が自力でも、おしっこを出せるようになってきていて、そのため、身体にくっついているクダのことを異物として捉え、それをなんとか外そうとしているように思えていた。

「そうだ、きっと尿道がクダのことを余計な異物と認識し出しているんだろうな。毎日、ユリーフを飲んできた成果なんだろうな」

私は、勝手にそう思っていた。

「いいぞ。きっと、おしっこは自力でも出るように治ってきているんだ」

私は、医学的な根拠など全く無いが、勝手にそのように感じていた。

「そろそろお昼だな」

お昼ごはんを食べ終わったら、近所のイオンまで食料品の買い出しに行ってこよう。そして、お昼ごはんを食べ終わると、近所のイオンまで歩いていた。

「あ、なんだか歩く度に、クダが少しずつ身体から外れてきているような気がする」

私は、イオンまでの道を歩きながら、勝手な妄想をしていた。

「もしかして、ユリーフの薬で、おしっこを自力でも出せるようになってきた尿道が、尿道の中央を通っているクダのことを異物として認識、異物は身体から外してしまおうと思っているのだ」

いつしか私は、そう思うようになっていた。そして、私の医学的知識などない、勝手な妄想は、イオンへの道を歩いている間じゅう、勝手にどんどん膨らんでいった。

私の尿道は、毎日、朝晩飲んでいるユリーフの薬のおかげで、急速に回復していた。前立腺も小さくなってきているようだった。

「ただいま!」

イオンでの買い物を終えて、家に戻ると、玄関先にお出迎えに出てきた愛猫の頭を撫でてあげてから、部屋の中に入った。買ってきた食料品を、冷蔵庫の中にしまってから、おしっこに行きたくなって、トイレに駆け込むと、便器に腰かけた。

「なんだか、クダが少し長くなったような気がするな」

私は、手に持っている自分の身体から飛び出している透明なクダをみて、そう思った。今朝、クダを見たときは、もっとクダの長さは短かった気がしていた。それが、今見たら、今朝よりもクダの長さが、ぜんぜん長くなっているように感じた。

そう、私の尿道は、毎日のユリーフのおかげで、どんどん急速に回復していたのだ。回復してきた尿道は、膀胱の中に貯まったおしっこを、自分の中央に通っているクダの力なんかに頼らなくても、自力でおしっこを身体の外に排出できるようになっていた。

そうなると、私の尿道としては、自分の中央を通っているクダの存在が邪魔くさくなってきていた。このクダは、身体にとっては完全な異物だ。身体の中に存在する異物は、身体から出してしまわなければならない。

そう思った私の尿道は、必死になって、自分の中央を通っているクダのことを身体の外に取り出そうとしていた。その結果、少しずつだが、クダは、私の尿道によって、身体の外へ、外へと排出されていた。

ポン!

そして、私の尿道に押し出されたクダは、私の身体から突然外れて、床の上に転がった。いきなりクダが外れた私の尿道からは、膀胱に貯まっていたおしっこが飛び出してきて、床の上に散らかった。

「ああ、掃除しなくちゃ」

私は、慌てて自分の尿道がまき散らした床のおしっこを、トイレットペーパーで拭き取った。床の上に転がっている身体から外れたクダを拾い上げると、外れたクダを再び自分の尿道に挿入しようとしたが、うまく挿入できなかった。

「仕方がない。週明けになったら、外れてしまったクダを持って、病院に行って、診てもらおう」

そう思いながら、外れたクダをぐるぐると巻くと、おしっこの袋と一緒に机の上に乗せておいた。その間、週末のおしっこは、どうしていたかというと、おしっこは普通に尿道からトイレに出ていたのであった。

週明けになって、身体から外れたクダとおしっこ袋を持って、病院に行って、それらを先生に見せると、

「ああ、ユリーフの薬が効いたみたいですね。もう大丈夫です、クダが無くても、おしっこは普通に今まで通りできます」

先生は、私に言ってくれた。

前立腺の病気が治って、またおしっこが出来るようになったのだ。なんだか嬉しくなって、だらしなく私の顔から笑顔がこぼれていた。

そこで、私は、ハッとして、自分がイオンで買い物してきたレジ袋をぶら下げて、自分の家の玄関に立っていることに気づいた。おしっこの袋は、肩からぶら下げている百均のバッグの中に入っており、そこから伸びたクダは、私の身体の、尿道の中へと繋がっていた。

「なんだ、クダがポンと外れたのは、ただの自分の妄想か」

でも、もしかしたら本当にクダの長さが、今朝確認したときのクダの長さよりも長くなっているかも、そう思った私は、トイレに行くと服を脱いで、自分の身体についているクダの長さを確認した。

もちろん特に、クダの長さが長くなっていることはなく、クダが身体から外れていることも全く無かった。

前立腺は小さくなっているはずにつづく


おしっこは出るようになっているはず
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