また、おしっこの袋

「それでは、少し歩いてきてください」

クダを外してもらえた私は、看護師に言われて、15番の隣の診察室を追い出されていた。実は、その少し前に、

「自由になれた!」

クダが抜けたという晴れ晴れとした気分で、感動に浸っていた私は、看護師に声を掛けられていた。

「おしっこが出そうになったら、遠慮せずに、そのまま出してくださいね」

ふと看護師の声に、我に返った私は、上向きで横になっている自分の下半身を覗きこむと、大きなプラスチック製の花瓶のようなものを下半身に当てられていた。看護師が、その花瓶を、私の下半身に当てておいてくれたおかげで、私が、おしっこしたくなったときに、そのまま、おしっこをすれば、花瓶の中に、私のおしっこが出るようになっていた。

本来ならば、クダを抜く前に、身体の中に、おしっこの代わりとなる水を大量に入れられているので、クダを外すと同時に、その水がおしっことなって、身体の外、プラスチック製の花瓶の中に投入されるはずだったのだろう。しかし、特におしっこがしたいという風にもならず、おしっこは出なかった。

「自分で、これを持って、おしっこがしたくなったら、この中に、おしっこをして下さいね」

看護師は、私にプラスチック製の花瓶を持たせて、隣の診察室に行ってしまった。しばらく、その花瓶を手にしたまま、ベッドに横になっていたが、特におしっこがしたいということもなく、時間は過ぎてしまっていた。

「それでは、少し歩いてきてください」

そしたら、看護師に言われて、私は15番の隣の診察室を追い出されたのであった。30分ぐらい廊下をぐるぐると歩き回ってくれば、おしっこも出たくなるだろうということだった。

「おしっこが出たくなったら、戻ってくれば良いのですか?」

「おしっこが出たくなったら、そのままトイレに行って、そこでおしっこしてきて大丈夫です」

「出たおしっこは流してしまっても大丈夫ですか?」

「その後に、診察室で検査できますから、検査すれば、すぐにどのぐらいのおしっこが出たかは、わかりますので」

そして、私は診察室の外、廊下に出て、まずは廊下を受付の方に向かって、ゆっくりと歩いていた。受付の前まで到着すると、今朝ほど採血室に行くときに通った反対側の窓際の廊下へ抜け、その突き当たりを採血室とは反対の右に曲がっていくと、2階のフロアに上がってきたときのエスカレーターの前に行けることがわかった。エスカレーターの脇を通り抜けて、ぐるっと1周すると、また受付のある廊下の前まで戻ってこられる。

「このコースで、ぐるぐる1周しよう」

私は、ぐるぐる回るコースを決めて、歩き始めた。おしっこの袋もぶら下げていない。クダもくっついていない。自由なのだから、ぐるぐると廊下ぐらいいくらでも早く1周できるはずなのに、なんとなく歩くスピードに調子が出ない。

下半身に、おしっこが貯まっている感じがする。お腹が重たいのだ。病院の廊下の壁には、ずっと捕まって歩くことが出来るように、手すりが全面に設置されていた。私は、その手すりにしっかり捕まりながら、1周、2周と歩いていた。

「なんか、おしっこ出そう」

2周回って、3周目に差し掛かったとき、そんな気がしたので、ガラス張りの廊下に差し掛かったとき、右折はせずに、採血室方面、左折をして、採血室の手前にあるトイレに向かった。トイレの中で頑張ってはみたのだが、おしっこは出なかった。

「まだ、出たくないのか?」

私は、再びトイレを出て、廊下に戻り、ぐるぐると廊下を1周するマラソンコースのコースに戻った。さらに1周、2周と回って、また、おしっこがしたいかもと思えた。そして、トイレに行ってみるが、やはり、おしっこは出なかった。

「まだ、ダメか」

廊下に戻って、廊下のフルマラソンを再開する。しばらく歩いていると、看護師が迎えに来た。

「どうですか?出ましたか?」

「いいえ、まだです」

「診察室に戻りましょうか?」

「もう少し頑張れば、出そうですけど・・」

私は、看護師と一緒に診察室に戻るために、廊下を歩き出した。と、なんとなくまた、おしっこが出そうになった。

「なんか出そうな気が・・」

私は、看護師にそう言って、最後のTRYと思って、もう1回だけトイレに行ってみる。看護師は、先に診察室に戻っているそうなので、おしっこが終わったら、診察室に戻ってくるように言われた。

トイレで頑張ってはみたものの、結局おしっこは出なかった。

「出ませんでした」

私は、診察室に戻ると、看護師に告げた。再び診察室のベッドに横になると、私の身体の中にクダが挿入されて、また、おしっこの袋をぶら下げることとなった。

「まだ、薬のほうが効いてきていないみたいなので」

先生にそう言われて、もう後2週間分、ユリーフの薬を処方してもらうこととなった。また明日からも2週間、朝ごはんと夜ごはんの後にユリーフの薬を1錠ずつ飲んで過ごすことなってしまった。そして、さらに2週間後の木曜日、病院に来て、再び、おしっこが出るかどうかの確認のため、クダを外すこととなった。

すごくガッカリだったが、仕方がない。診察室を出て、廊下のソファに腰かけて待っていると、看護師が、次の2週間分のユリーフの処方箋と次の予約票、本日の会計を持って出てきた。

私は、看護師からそれらが入ったファイルを受け取り、1階エントランスにある会計窓口に持っていく。会計窓口で会計処理をしてもらうと、診察券が返されて、その診察券を脇の精算機に投入すると、本日の診察代が機械の画面に表示された。

4,500円

それを支払ってから、百均で購入したバッグに、おしっこの袋を入れ、肩からぶら下げて病院を出る。帰りは、この袋をぶら下げていないと思っていたので、なんか凹んでいた。

それでも、次回、2週間後こそは、クダを外せば、おしっこが出るようになっている、そう信じて、病院を出ると、すぐ隣のイオン薬局に行き、そこで2週間分のユリーフをもらって帰る。

前回もらった分のユリーフは、ちょうど今夜の夜ごはんの後に飲む分で最後だった。明日からは、今日もらったユリーフを毎朝晩と飲み始めることとなるのであった。

2回目の挑戦につづく


また、おしっこの袋
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