PSAの値

「次の方、どうぞ」

朝から待ち望んでいた15番の部屋から先生に呼ばれた。ちょうど、採血検査が戻って、しばらく、10分ぐらい経ってのことだった。

「どうですか?」

先生に、病気の具合を聞かれた。

「おしっこは、ちゃんと袋を付けているので、普通に出ています」

私は、答えた。身体の中にクダを通して、そこから、身体の外のおしっこの袋に出ているのだから、自力でおしっこが出来ているわけではないのだったが。

「さっきの採血検査の結果なのですが、PSAの値が22あります」

先生は、採血検査の結果が書かれた紙を、私に見せながら言った。

「普通は、正常だとPSAの値は、4以下なのですが、22というのは、かなり高いです」

先生は、心配そうに、私にそう言っていたのだが、私には、それがどれほど深刻なものなのかは、ぜんぜんわからなかった。PSAの値は、22でも何でも良いけど、それよりも早く、このおしっこ袋を外せるようになりたいなと、私は思っていた。それで、

「あと、お薬は、毎朝と毎晩、ごはんを食べ終わった後に飲んでいます。そのせいかどうかわからないですが、おしっこが出るようになっているような気がしています」

私は、先生に言った。そう言えば、先生が前立腺は治りつつありますねと、言ってくれて、もうおしっこの袋は要りませんとなってくれるような気がしていたのだ。

もしかしたら、この時も、特には、おしっこが出るようになど少しも治っていなかったのかもしれないが、この時の私には、たまにおしっこがクダを通って、袋の中に出てくるときなどに起こる感触を、本気で治りかけているものと思っていたのだった。

「そうですか。それでは、隣の診察室で、実際にクダを外してみて、おしっこがちゃんと出るようになったかどうかを確認してみましょう」

先生は、私に言った。

「隣の部屋で、クダを外すのですか?」

「はい、ここでは外せませんので」

15番の診察室は、先生のデスクとパソコンが置いてあって、その前に、患者が座って、先生の話を聞くぐらいのスペースしか無かった。

「それでは、下に着ているものを下ろして、タオルを掛けたら、そこのベッドに上向きに寝てください」

私は、服を下ろして、タオルを掛けて、ベッドに横になった。ベッドに横になると、看護師が隣の部屋にいる先生と会話していた。

「とりあえず、200ccで」

私の身体から外に出ているクダの先端に、おしっこの袋がぶら下がっている。そのちょうどクダの真ん中辺りで、クダは二股になっていて、メインのクダの先っぽに、おしっこの袋がぶら下がっていた。二股のもう一方は、普段はキャップがしてあり、その先には何も付いていなかった。

看護師は、先生の指示により、その空いているクダのキャップを開けて、そこから水を、私の身体の中へ流し込んでいた。200ccの水が全て私の身体の中に流し終わると、

「抜きますよ」

看護師に、ぐいぐいとクダを2、3回引かれて、私の身体の中に入っていたクダは抜けてしまった。抜くのは、そんなに痛くなかった。

「抜けましたよ」

看護師に言われて、はじめて、クダが抜けていることに気づいたぐらいだ。クダが無く、おしっこの袋もぶら下がっていない状態の自分の身体にしばし感動してしまっていた。

「自由になれた!」

そんな晴れ晴れとした気分だった。

また、おしっこの袋につづく


PSAの値
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